ハイパーマッスルエンジニア

Vim、ShellScriptについてよく書く

俺がエンジニアとして作りたかったのは「治療薬」だったがしかし。

「君のプロダクトはビタミン剤か?鎮痛剤か?それとも治療薬か?」という記事を読んだ。

blog.btrax.com

記事で紹介されている「ビタミン剤」「鎮痛剤」「治療薬」のプロダクト例は下記。

  • ビタミン剤:YouTube, Facebook, Tiktok
  • 鎮痛剤:Slack, Zoom, Salesforce
  • 治療薬:レーシック手術, 結婚相談所, どこでもドア

ちなみにゲーム系は「キャンディー」らしい。

この記事を読んで、ああ自分はずっと治療薬を作りたかったんだなあと気付かされた。

初めて業務で触ったシステムはEC運営を自動化・効率化するシステムで、この記事で言うところの「鎮痛剤」だ。
仕事が完全にはなくならないが、楽にはなるもの。しかしあくまで鎮痛剤なので痛みは生じるし、また別の痛みが発生することもある。そしてそれを和らげるために新たに機能を開発して・・・という流れ。
これはエンジニアとして開発のネタは尽きないし、やると確かに喜ぶ人もいるのでやりがいもある。しかし機能はどんどん膨らみ複雑になり、それでも鎮痛剤を求められ更に機能を開発し、いつしか「あれ、いつになっても仕事がなくならないぞ?」と思うようになった。


次に携わったのはAIチャットボット。おそらくこれも「鎮痛剤」だ。
問い合わせをするユーザ、それを受けるオペレータ、双方の手間を軽減でき、かつユーザーの離脱を防ぐことで売上にも直結するようなサービスだ。
ちなみに開発も面白い。チャットボット本体よりもそれを管理するシステムを開発することが主で、オペレータがいかに効率的に楽しくボットをトレーニングできるか、蓄積された会話データをどう可視化してサービス向上に繋げるか、などやりたいことが無限に出てくる。

自分は当初これは「治療薬」であると思っていた。問い合わせ対応をする必要がなくなり、オペレータの余暇が増えると思っていた。が、違った。問い合わせ対応がなくなることで代わりに新たな仕事が生まれた。それは「チャットボットを管理する仕事」だ。そうなるとボットを管理する上で生まれる痛み、これを和らげるための鎮痛剤が必要になる。なのでそれを開発して、するとまた別の痛みが発生してまた開発して・・・という流れであった。


この辺でエンジニアとはなんなのか、果たして本当に世の中の役に立っているのかという疑問を抱いた。
どれだけ頑張ってもその人の仕事はなくならない、それどころか本来やりたくもない別の仕事を生み出しているだけじゃないのか。
エンジニアなんかより実際にエアコンを取り付けてくれる人のほうが本当に世の中の役に立っている、そんなことを引っ越したばかりの新居で思っていた。


これこそまさに「鎮痛剤」と「治療薬」を履き違えて開発していたことに他ならない。
区別ができていないと本当に苦しい状態で開発することになる。
自分が作りたいプロダクトはどの種類なのかをはっきりしておいたほうがいい。別にどれが偉いとか優劣は存在しない、自分が納得できるかがすべてだ。

自分は当時このもやもやを『ブルシットジョブ』や『ラッセルの幸福論』あたりを読んで解消したが、この記事を読んでたらもっと楽になっていただろうなあと思う。

そして今、自分は「ビタミン剤」を作っている。

toC向けのサービスで、ぶっちゃけあってもなくてもいいサービスだ。でもあったら喜ぶ人は確実にいるし、このサービスが広がることによる世界の変化を見てみたい。きっと今よりもっと良い世の中になっていると信じている。
開発も当然面白い。色々泥臭い部分もあるけど、少しでも前に進めるように色々機能を削ったり追加したり、ワイワイやっている。

エンジニアになった当初の目的は「治療薬」を作ることだったけど、今は別になんでもいいかなと思っている。

自分が納得して開発できるものなら、何でもいいんだよ。
好きなようにしてください。

好きなようにしてください